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プレーパークってなに? ~遊びは子どもの主食です~ 「川崎市子ども夢パーク」「フリースペースたまりば」西野博之さんのお話メモ

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2022年9月24日(土)、中野区主催の講座「プレーパークってなに?」を聞いてきました。

お話しいただいたのは、川崎市に「川崎市子ども夢パーク」をつくり、現在はNPO法人「フリースペースたまりば」理事長でもある西野さん。映画『ゆめパのじかん』やNHKドキュメント24時にも出ている方です。

とても良いお話でした!

「プレーパークってなに?」というテーマから、「今の子どもはなぜこんなにも生きづらいのか?」「今の子どもにとって遊びがなぜ大切か?」という話に。何回かスクリーンに映ったパワポの文字がにじみました。もっと多くの方に聴いていただきたかったです。

そこで、お話のメモをつくりました。ちょっと長いですし、途切れ途切れのメモですが、ぜひお読みください。

西野博之さんのお話メモ

1996年に川崎市子どもの権利条例の調査研究員世話人となり、子どもの権利条例の制定に関わりました。条例ができた後「これを活かしていくにはどうしたらいいか?」 それを考えて「川崎市子ども夢パーク」をつくりました。

コロナ禍で「友達できない」「学校が楽しくない」「給食も黙食」 不登校児は増加しています。19万1千人になりました。小学生の100人に1人、中学生の24人に1人が不登校です。(驚愕です!)

だから、学校以外で学ぶ場も必要になっているのです。

プレーパークへの参加で出席扱いにしている自治体も出てきました。(どこ?メモし忘れました……)上田市は市内の映画館「シネクラブ」で『ゆめパのじかん』を観る時間を出席扱いにしています。

川崎市でなぜプレーパークに予算がついたか?

権利条例を基に不登校児への対策の一環として企画したら、一気にプレパに予算がつきました。予算は年間 8000 万円です。

さて、ここでクイズです。
小学校~中学校でいじめが一番多い学年は……?

答えは

小学校2年生、第2位が小学校1年生。

そんなに小さいときからいじめがあるのです。小学校低学年がすごくストレスを抱えています。「学校が怖い」というスタートになっています。

10~39 歳の各世代での死因1位は自死。そんな国は日本くらいです。そんな中でコロナが発生し、子どもたちのストレスがさらに増大していきました。H22年156人→R2年415人へ自死が急増。毎日1人以上どこかで自死していることになります。

自死対策は孤立を防ぐこと。コロナ対策は接触や会話を減らすこと。両立しづらいのです。だから、外でのあそび場が必要です。プレーパークを進める上では、「外での遊びが子どもにとって必要だ」というデータを確保することが大事になります。

日本の子どもの特徴は、自己肯定感の低さ

自分は「バカ」「ダメ」と思っています。自分自身に満足している子 10.4%しかいないのです。

こんなにも、子どもの自信を奪っているのは何なのでしょうか?

それは…

大人の不安です。親が先回りして「失敗」を未然に防いでしまうのです。

「正しい親」にみられたい

勉強ができる・スポーツができる・ともだちが多い…… そういう「子どもの評価」が「親の評価」に結びついてしまう感覚。早期教育もどんどん盛んになり「リスク回避」「手遅れにならないうちに」と、今やかけっこや逆上がりの家庭教師まであるのです。

過干渉の親が増加しています。子どもに「正しさ」「完璧さ」を求めて、「なんでこれできないの?」「普通これくらいできるでしょ!」と言ってしまう。弱音を吐けない家庭環境になっていきます。子どもたちが辛い感情を外に出せない状況になる。怒りが心の奥底に蓄積していく。それが、暴力を・いじめを生み出します。生きづらさを生み出します。

船戸結愛ちゃん(5歳)虐待死事件で、結愛ちゃんの残したノートにこんな一文がありました。

「ママとパパにいわれなくってもしっかりと じぶんからもっともっと きょうよりかあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします ほんとうにおなじことはしません ゆるして きのうぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだから やめるから もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします あしたのあさは きょうみたいにやるんじゃなくて もうあしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやって パパとママにみせるぞというきもちでやるぞ」

5歳の子が「あそぶってあほみたいだから やめるから」なんて、本来は言わないです。どれだけ、追い詰めたのか。

ユニセフ 「先進国の子どもの幸福度調査」で、日本の子どもたちの「精神的幸福度」は 38 カ国中 37 位

自分が教えている大学で、学生たちに「この調査結果どう思う?」と聞いてみました。

「37位、当然です」…と。

地域に遊び場がない、ボールが使えない、公園は禁止ばかり。ちょっとはしゃぐと怒られる。やりたことができずに、やらねばいけないことばかり。時間に追われている。自由がない。敷かれたレールに必死で乗っている。話を聞いてもらえない。意見が言えない。自分が社会で役立つ場がない。

学生たちは堰を切ったように話してくれました。

「子どもはだんだんと人間になるのではない、すでに人間である。生まれながらにして一人の人間であり、権利の主体である。

チェコのコルチャック先生の言葉、子どもの権利条約の根幹を貫く考え方です。子どもと大人は社会のパートナーなのです。「子ども市民」という発想が大事です。

川崎市では、2年間で200回の会議を経て「子どもの権利条例」を策定しました。川崎市子どもの権利条例27条には「子どもの居場所が大切」と明記されています。

だから、不登校児の居場所をつくり、残った場所をプレーパークにして一体的に運営しています。

子どもたちは、土が盛ってあるだけで大喜びで遊びます。いい土が出そうな工事現場に声をかけて、土をもらってきています。工事している業者さんも遠くまで運んでいかなくて済むので喜んで提供してくれるのです。

夢パークには公設民営のフリースペースがあり、不登校児、障がいをもつ子も過ごせます。プレーパークにはプレーワーカーが7人、事務員が3人います。

「子どもの育ちに必要な3要素」をご存知ですか?

「遊ぶ」「学ぶ」そして、「ケアされる(気にかけられる)こと」

つながりの中で子どもは育ちます。ICT 教育が進んでいくと、タブレットで学ぶことが増えます。でも、「実体験なしにわかった気になってしまう」のが心配です。

「霜柱」とタブレットで検索すれば情報は出てきます。でも、踏んだときの音や手にした時の冷たさは実感できません。自然の不思議さと出会うこと。センスオブワンダーの感覚。子どもは、五感をつかって遊び感じることが大切なのです。

子どもたちは水遊びが大好きです。でも、水遊びで派手に水を使っていたら市民からクレームがきました。そこで、200万かけて井戸を掘りました。幸い井戸を掘りあてられました。

やりたいことよりも「やらねばいけないこと」が優先されている環境のなかに今の子どもたちはいます。だから、やってみたいことに挑戦できる環境づくりをしていくのです。禁止の看板を持たないあそび場づくりをしていくのです。

合言葉は「ケガと弁当は自分もち」

自分の責任で自由に遊ぶ場、これを教育委員会と一緒につくりました。(スゴイ。ウラヤマシスギル!)

とはいえ安全管理はしっかりやります。

リスク(見えてる危険)……あぶなっかしい手つきでノコギリ切ってる等は、手をださずに見守りつつ最低限のケアを。
ハザード(負えない危険)……柱が腐っている・釘が出ている等は、事前にチェックして排除する。

子どもたちが遊びの「消費者」ではなく遊びの「生産者」へなっていくように、子どもたちが「遊びと暮らしの主体」を取り戻すこと。ゲームは大人によってつくられた遊びです。そこで子どもは遊びの消費者でしかありません。プレーパークの遊びは、子どもが自分でつくります。遊びの生産者になっていきます。

防災拠点としてのプレーパークという視点もあります。いざというときに、火をたけない子どもたちばかりで防災上いいのか? 焚火を起こせる子を育てるのは行政の責任だと思っています。公園の場合は公園条例等の規制がありますが、夢パークは社会教育施設なので、自由に火起こしができます。

自己効力感、自己有用感、「やった~!できた~!」という感覚を子どものうちに体感してほしいです。ぼ~っと過ごすことも含めて、とにかく、「やってみたい」がスタートです。

「遊びは子どもの主食です」という日本医師会のポスター、医学的にも遊びは大事なのです。

なぜ、外遊びなのか?

風、陽にあたり、大気にふれる。不快なこと(突風、砂ホコリなど)にも出会う。そこが大事です。遊具は自分たちでつくります。手作りのウォータースライダー。手作りのじゃぶじゃぶ池。

子どもたちがやれば、失敗もします。でも、いま失敗しないでいつ失敗するの?  安心して失敗できる環境をつくりましょう。

生きづらさを抱える若者には「0・100 タイプ」が多いんです。「できるか、やらないか」。でも、挑戦して、失敗して、工夫してまたやってみて、教えてもらって、そしてできるようになるというプロセスが大切なのです。

「非認知能力」=「数値化されない力」、これが大事です。目標に向かって頑張る力。人と関わる力、人に教わる力。

夢パークの「夢横丁」というイベントでは、子どもたちが「YTK」という企画運営チームをつくります。「スタッフから仕事を奪おう!」が合言葉です。コロナでも中止とせず、子どもたちが感染対策を考えて開催しました。感染者は出ませんでした。

インクルーシブな育ちの場でもあります。誰かが誰かを放っておかない。気にかける・関心をもつようになる。

東京総合教育会議、これからの教育のあり方を考える場に有識者として呼ばれたことがあります。「誰一人取り残さない多様な学びと育ちの場をめざして」という趣旨で提言しました。

発達障害の考え方について一言

原初人類は、注意欠陥・多動だったのでないでしょうか? 外敵から身を守り獲物を捕らえて生きてきたのです。

そして現代。

「困った子」ではなく「困っている子」ではないでしょうか?
「学校不適応児」ではなく「子どもに適応できない学校教育の環境」ではないでしょうか?

多動の子には、得意な分野(強いところ)に光をあてます。問題児として放校処分になった子が、夢パークに来て夢中でペンキ塗りしていたことがあります。その子は、その後デザイナーになっていきました。

文部大臣視察が 2014年10月27日にありました。その時にもらった感想は「既存の教育では収まりきれない子どもたちが育っていく可能性がある。未来の学校のモデルのひとつではないか」

子どもはなかなか言葉にして助けを求めることはできません。辛いことほど、飲み込むことが多く、心配かけまいとします。

言葉にできない子どもの想いをキャッチするには「発見する相談」が必要です。子どもたちは待っていても相談には来ないのです。

「遊び場」や「子ども食堂」など日常的に大人が見守っている子どもの「居場所」が必要です。子どもの「SOS」をキャッチできるアンテナが立った感度のいい大人の存在も必要です。

子どもの話をしっかり聞くことができる大人になりましょう。「正しさ」で子どもを追い詰めないように。言葉にできずに怒りを爆発させる子どもたち、気持ちを表す言葉をたくさん獲得してもらいましょう。「さびしかったね」「辛かったね」「怖かったね」という「気持ちの言葉」で子どもたちに接しましょう。

魔法の言葉がひとつあります。それは、「きっと大丈夫」

親にできることは クウ・ネル・ダスに気を配ること。それくらいです。自立は1人でなんでもできることではない。自立するということは「助けて」が言えること。

無駄にみえる時間やスキマが大事です。安心できる居場所のなかで「きっと大丈夫」に包まれると、自分の頭で考え自分の足で歩くようになります。

「生きているだけですごいんだ」ToDoよりToBe

川崎市で子どもの権利条例ができたとき、私は講演しました。そのとき、別室で子どもたちが何やら話し合いをしていました。しばらくして講演会場にやってきて、「結論が出たので僕たちにも話をさせてくれ」と。そして、こんなメッセージをくれました。

「まず、大人が幸せにいてください。
大人が幸せでないのに、子どもだけ幸せにはなれません。
家庭や、学校、地域の中で、大人が幸せでいてください。
そのなかで子どもが幸せになっていきます。…」

完敗でした。

お話は以上、以下は質疑応答です!

Q:子どもどうしのいさかいにはどう対応しますか?

A:子どもたちは問題解決能力をもっています。ただし、その子の背景をよく見ます。基本介入はしないです。ケンカには……双方にホントに戦う意思があるのか?を見ます。戦う気がない子を殴っていたらイジメですので止めます。

とっさに棒や刃物を持たないように見回って、そういうものを排除しておくことも大事です。

発達障害の子が相手をロックオンして、殴らないと収まらない時もあります。そういう時は視界から相手をなくすようにします。大人が間に入って、見えないようにして、その間に相手の子を逃がします。

ちゃんと話を聴いて、思いを伝え合えるような対話につなげていくようにします。子どもどうしで解決する機会を奪わないように。これが大事です。スタッフも自分が抱えてることを振り返ること、気付いたことをお互いに言い合える関係が大事です。

Q:子どものケンカに大人(親)が介入しているときは…?

A:親の方に対応をします 「どうされました?」という感じで。

Q:どこからがイジメですか? 相手に興味があってイジワルすることもあるので。また、どこから大人が介入しますか?

A:やられた側がイジメだと感じたことがイジメです。

声がけするとき、例えばプロレスごっこをしていると言いながら、けっこう痛そうにしているとき。やられている子に「大丈夫?」と声かけして「大丈夫」と返ってきたら、イジメです。

イジメじゃない場合は「なんのこと?」という反応をします。

・・・・・

以上、誰かの心に響けば幸いです。

今の日本の子どもたちを取り巻く環境、大切なプレーパークという外遊びの場、私たち大人が解決のカギを握っていますね。

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